レトロな(8) 最近見ないな立派なRESETボタン、でもRESET信号は不滅?

Joseph Halfmoon

レトロなPCには立派なリセット・ボタンがあった、そういう追憶の中で生きている年寄です。リセット・ボタンが珍しい若者に気づいて驚きました。そういえば最近のパソコンやスマホにはアカラサマなリセットボタンってないの~。無いわけじゃないけれども、どうもメーカー様は隠したいご様子。昔は何かあるとRESET押してたんだけれどな~。

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レトロなPCはRESETボタンを押すとピポっとか鳴るのが普通でした。システムを入れ替える度にRESETかけたりしてRESET音はお馴染みさん。

最近のRESETボタン

自分はレトロな人だけれども、使っているノートPCやスマホなどはそれほど古くないです。改めて眺めてみると、昔のような「RESET」ボタンなど確かにありませぬ。でもまあ年寄は知っています。多くの装置の場合、

RESETボタンならぬ、RESET Hole

という形で基板上に小さなRESETボタンが載っていることが多いことを。ピン先で突くような非常用のスイッチです。しかし、どうもこれを使うのは修理関係の人?のみを想定しているのか、メーカのホームページを見ても説明は無かったりします。電源キーの長押しなど適正なソフトウエアを介しての「再起動方法」を使うように書かれてます。ハードウエアのRESETホールを使うような荒業は止めてねということみたいです。まあ最近のスマホやパソコンは電源が切れているように見えても中で動いていたりするし、途中でハードリセットかけたりするとどんな中途半端な状態になるやもしれないです。そういうことなんだろな~ ハードウエアのRESETボタンというかRESET信号をアカラサマにしないのは。

RESET信号は不滅?

ここで世の中で売られているデジタルな回路には2種類あり、という知っている人は知っている前置きをします。

    1. 組み合わせ回路
    2. 順序回路

1の組み合わせ回路は全ての入力端子の状態を決めると全ての出力端子の状態が決まるような回路です。ハッキリ言ってこちらの回路にはRESET信号など不要。全入力決めれば結果は「一意」に決まるから。一方、2の順序回路は、全ての入力端子の状態を決めても、出力端子の状態が「一意に」決まるとは言えない回路です。2の方には内部に記憶素子が含まれており、全ての入力に加えて、過去の記憶のあれやこれやが決まらないと今の出力が決まらない回路です。お分かりのとおり、スマホやパソコンを含むほぼ全てのデジタル回路からなる商品は2の順序回路であります。

そしてこの順序回路において、内蔵する記憶素子の状態を「一定の初期状態にする」ための信号がRESET信号です。これがなければ入力端子をいくら操作しても制御不能。よって現在のほぼ全ての電子回路の内部のどこかにはRESET信号がいらっしゃいます。

ただし、スマホやパソコンのような複雑なシステムで現在の状態を見ないでハードRESETかけるとどんな恐ろしいことになるかは知る由もありません。

まずはパワーオン・リセット

全ての電子回路にはパワーオンの瞬間があります。スマホなどでは実際は内部の回路が動いている状態だけど画面が暗いだけ、みたいな見せかけの「パワーオフ」もありますが、それではありません。真に電圧0の状態から電源ONする瞬間です。

電源ONの瞬間、デジタル回路内部の記憶素子はてんでんバラバラ、相矛盾した状態にいらっしゃることが多いので、そこを「叩いてまわる」のがRESET信号のお役目です。RESETボタンがある場合、電源ON後にそのボタンを押せば初期化状態になる筈。しかし毎度電源入れる度にお客にRESETボタンを押してね、というのも大変。そこで内部で密かに?RESET信号を生成することが多いです。

一番「簡単」なパワーオンリセット回路の実例が以下に(以下アナデバ様のLTspiceシミュレータの回路図です。)PowerONresetCIR

上記のVpowerというのがメイン電源のつもりです。これがONすると「一瞬のうちに」3.3Vの電圧を供給してくれる想定です。RSTと書かれている信号がマイコンなどのリセット端子に接続されるリセット信号です。RESET状態を示すのがロウ(論理0、電圧0V付近)の信号です。ハイ(論理1、電圧3.3V付近)では通常動作です。

ミソはR1とC1で作られる時定数で、ポンと電源が立ち上がった後、RSTの電位は以下のシミュレーション結果のようにダラダラゆっくりと上昇していくのであります。POCwaveform

一例として、マイコン業界の大立者、STmicroelectronics社製STM32F072RBマイコンの場合、0VでスタートしたRST信号が1.84Vから2.0Vくらいまで上昇するとRESET期間を終え、通常動作がスタートするようになってました。そしてRESET期間は「4ミリ秒くらい」確保してね、と書いてあるみたい。上記のグラフをそのまま解釈すると8ミリ秒くらいあるように見えます。これで立派にRESETできた?

電源が「ポン」と瞬間的に立ち上がってくれれば良いですが、ダラダラ「ゆっくり」立ち上がる場合はかなりヤバイです。単なるRC回路で生成されているRST信号も電源につられてゆっくり上昇していき、うまくRESETがかからない可能性も無きにしもあらず。そんな場合の対策は後の方で。

ハードウエアのRESETボタン

マイコン開発ボードのように、アカラサマなRESETボタンを設けてもよい(というか良く使うよ)なケースで多いのは、上記回路のC1と並列にプッシュボタンを配置するものです。電源入っているときにボタンを押すと、RSTがGND(0V)に接続されてRESETがかかり、離すとRCの時定数でRSTが上昇して通常動作に復帰するもの。このようなハードウエアのRESETボタンの実例が以下に。RESET

上記は、STmicroelectronics社の開発ボード Nucleo-F072RBです。黒い色のプッシュスイッチがRESETボタンです。これを押せばリセットがかかるっと。Arduinoサイズまでの比較的大き目のボードではRESETボタンを搭載している開発ボードが多いです。しかしサイズが小さくなると載せられないものもでてきます。そういうボードでも以下のような感じでRESET信号を入力できることが多いです。

    • Raspberry Pi Pico、端子(Runというお名前だけれど)として出ているのでスイッチ欲しい人は外付けしてね。
    • Seeduino Xaio、端子の場所もないので、「ランド」が用意してあるので、ピンセットか何かで「突いて」ね。
リセットICというものもある

さきほど述べたように、RESETは一定の電源電圧が立ち上がった状態で一定の時間かけ続ける必要があります。まずは正常に回路が動作できる電源電圧でないとRESETかけるもなにもありません。また、相手の回路の「論理の深さ」によってクロックを何発入れてね、といった時間要求がある場合もあります。ドミノ倒し的に初期化する場合ね。さらに言えば、マイコン等ではそのクロック生成の大本を始動するのに一定時間かかることが多いです。今日のデジタル回路はクロックが動かないと手も足もでないっす。まず電源立ち上げ、クロックを起動し、電源とクロックが安定してから論理的な初期化をすると、それだけの期間が必要ですな。

その辺を制御するための「リセット」専用ICが多数存在します。別シリーズで実際に動かしてみたりしている記事があります。以下の2つです。どちらもチト古いチップだけれども。

部品屋根性(58) もうすく合併、リコー電子デバイス、R3111電圧ディテクタ

部品屋根性(59) ルネサス、M51957B、電圧システムリセットIC

モダーンなマイコンではRESET関係の回路を内蔵

近代的なマイコンではパワーオンリセットだけでなく、ブラウンアウトリセット(一瞬の電圧低下時に誤動作防ぐためにRESETをかけておく)などの機能を持つものが多いです。それらは自前でRESET信号生成するための回路を内蔵しています。一例としては、以下のMicroChip社のベストセラーPICマイコンなど

PIC16F18855

データシートを眺めれば、RESET生成回路について書かれておりますぞ。その要因の多いこと。

順序回路といっても誰か外の人に初期化してもらうものもあり

メモリは記憶素子の配列で、押しも押されぬ順序回路ではあるのですが、マイコンやFPGA内部の論理回路のように、アチコチにRESET信号が入力されることもなく、RESET信号も無く、成り行きで動いていたりします。これは何よ、と言えば、外にいるマイクロプロセッサなりマイクロコントローラなり、FPGAなりが適切な初期化シーケンスを実行してくれるからです。先にRESETかかる人がいるので、それに頼っている者ども。全部にRESET線を配線するとメモリセルがデカくなってしまう~。それにRESETかかっても消してはいけない記憶もありで、一律のRESET信号にはそぐわないっと。

レトロな話としては「CTRL+ALT+DEL」のキーボードRESET話もあるのだけれど。また今度か。

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“レトロな(8) 最近見ないな立派なRESETボタン、でもRESET信号は不滅?” への1件の返信

  1. 不揮発メモリが一般的になったのと立派なPMICが使えるようになったので最近は見なくなりましたね

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